彫塑
「彫塑」は、器のように使われることで意味を持つものではなく、それ自体が物語を持つ独立した造形作品です。
彫塑では、モチーフにキャラクターを設定し、表情や仕草を作り込むことで、その人物の存在感を引き出す作品を制作しています。
顔の動きや目線、姿勢の変化や余白を活かして含みを持たせ
「この人物は何を思い、どんな状況にいるのか?」と鑑賞者が想像できる余地を残します。
また、彫塑の中には、キャラクター性ではなくテーマそのものを表現する作品もあります。
「おもちゃ」シリーズでは、誰もが子供の頃に持っていた、自由な発想で遊ぶ感覚をテーマにしています。
気づかぬうちに、我々は大人になるにつれて現実的な視点が強まり、想像する力が次第に眠ってしまいます。
このシリーズは、そんな大人の想像力を呼び覚ますためのものでもあります。

大黒天
2018制作・福の神らしい優しく福々しい笑顔と
ちんまりとした身近で、愛嬌のあるフォルムを想定。

木火土金水
2019制作・五行思想をモチーフとして擬人化した作品。
単体での個性を際立たせつつ、それぞれの特性が絡み合い、絶えず変化し続ける賑やかな関係性を想定。

梅若丸
2022制作・能『隅田川』より。
あらすじ
行方不明になった息子を探す母親が
隅田川のほとりでついに我が子の死を知る悲劇の物語。
その終盤、母の前に現れた少年の霊が
再会の喜びと未練を抱えながら消えていく場面を想定。

source
2018制作・友人姉妹が経営するお店に展示するために制作した作品。
自分たちの信じるものを大切にしながら
温かさと人間味、人を惹きつける魅力にあふれる姉妹の姿を想定。

人間「雨粒の視界」
2023制作・一瞬で落ちる雨粒の視点に立ち、人間を見つめてみた作品。
その視点では、人の姿は形を結ばず、揺らぎ、模様のように映る。
そんな想定のもと制作した作品。
結果として、必然的に抽象的な表現へと至った。

おもちゃ
2024制作・子供の頃の自由な発想を、大人の視点で再構築した彫塑。
『おもちゃ=子供が自由に世界をつくる道具。』
その本質をテーマとして表現した作品。
素材:竹箒・馬頭彫塑